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SARS-CoV-2の迅速検出のための抗原検査での偽陽性結果の潜在性 - 臨床検査スタッフと医療提供者へのレター


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SARS-CoV-2の迅速検出のための抗原検査での偽陽性結果の潜在性 - 臨床検査スタッフと医療提供者へのレター

(図 Medical Pixabay)

 

米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は、臨床検査スタッフと医療提供者に次のことについて警告しています。偽陽性(false positive)の結果は、SARS-CoV-2を迅速に検出するための抗原検査(antigen tests)の使用に関する指示にユーザーが従わないときを含めて、抗原検査で起こりえます。 一般に、抗原検査は、発症から特定の日数以内に医療提供者により、COVID-19の疑いがあるとされた個人から収集された認可された検体タイプで、SARS-CoV-2抗原の定性的検出に対して適応されます。 FDAは、高齢者居住施設(nursing homes)やその他の状況で使用される抗原検査に関連している偽陽性の結果の報告を認識していますし、監視を続け、そして、機器の安全性と性能について、これらの報告とその他の入手可能な情報を評価します。

FDAは、総ての臨床検査(laboratory tests)での偽陽性結果のリスクについて、臨床検査スタッフと医療提供者に注意喚起しています。 検査室[研究室/実験室]は、感染率の低い大集団をスクリーニングに対して、とても正確な検査が使用されているときでさえも、一部の偽陽性の結果が発生することを予期する必要があります。 医療提供者と臨床検査スタッフは、次のことにより検査結果の正確な報告を保証するのに役立ちます。疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)が推奨するように、検査の使用のために承認された指示と検査プロセスでの主要な手順に従います。これには、適切なとき、分子分析評価(assay)による定期的なフォローアップ検査(反射検査)を含みます。それと、彼らの患者集団の検査結果を解釈するとき、偽陽性結果の予期される発生を考慮することによります。

 

推奨事項

FDAは、SARS-CoV-2の迅速な検出に対して、抗原検査を使用する臨床検査スタッフと医療提供者に推奨しています:

●  次のことに注意してください。抗原緊急使用許可での承認条件(Conditions of Authorization in the antigen Emergency Use Authorizations)は次の指定をします。承認された検査室は、検査を実施し、検査結果を読み取るときに、通常はパッケージに同梱されたもの見られる製造元の使用説明書(instructions for use、IFU)に従うものとします。 もしもあなたが使用している検査の同梱されている文書がなくなったのならば、あなたは製造元に問い合わせることができます。 各々の検査で使用する承認された指示はまた、FDAの「COVID-19 IVD EUA ウエブ・ページ」にもあります。

  • 例えば、検査のために同梱された文書には、検査カートリッジ/カードの取り扱いに関する指示が含まれています。使用前に、開封した状態で保管されていないことを確認するなどです。 もしも検査構成部品が適切に保管されていないのならば、これは検査の性能に影響を与えかねません。
  • 検査のための同梱された文書は、結果を読むための適切な時間を含めて、検査結果の読み取りについての説明が含まれています。 指定された時間の前後に検査を読み取ることは、偽陽性かまたは偽陰性の結果を、結果として生じえます。

● 次のことに注意してください。バッチ方式[一括方式]で複数の検体を処理することは、各々の検体の正しい潜伏(incubation)時間を確保することを、より挑戦的にするかもしれません。検査装置で検体を処理し結果を読み取るとき、同梱された書を参照し、そして各々の検体の適切なタイミングを確認してください。

● 患者の検体を検査するときは、相互汚染のリスクを最小限に抑えるように注意してください、これは偽陽性の結果の原因となりえます。 作業スペースの不十分な清掃、機器の不十分な消毒、または保護具の不適切な使用(例えば、患者間での手袋交換のし忘れ)は、検体間の相互汚染のリスクを高め、その続いて起こる偽陽性の結果の原因となりえます。 標本の取り扱いと処理の間の手袋の交換や作業エリアの清掃に、CDCガイダンスを熟考してください。

● 高齢者居住施設やその他の状況で、抗原検査を使用するときに、CDCの推奨事項を熟考してください。 特に[病気が]低い発生率の郡での陽性結果に対して、48時間以内に確認的なRT-PCR検査を実行することを考慮に入れてください。

診断検査の結果を解釈するとき、陽性適中率(PPV)は疾患の有病率(prevalence)によって異なることに注意してください。 PPVは、真陽性の陽性検査結果の割合です。 病気の有病率が低下するにつれて、偽陽性の検査結果の割合が増加します。

  • 例えば。 特異度(specificity)が98%の検査では、有病率が10%の母集団でPPVが80%をわずかに超えることになります。つまり、100人の陽性結果のうち20人が偽陽性になります。
  • 同じ検査は、有病率が1%の母集団でPPVが約30%しかないため、100人中70人が偽陽性になる意味です。 これは、有病率が1%の集団では、検査結果が陽性の個人の30%だけが実際にこの病気にかかっていることを意味します。
  • 0.1%の有病率では、PPVはわずか4%になります。つまり、100人の陽性結果のうち96人が偽陽性になります。
  • 医療提供者は、診断検査の結果を解釈するとき、地域の有病率を考慮に入れるべきです。

● 臨床観察、患者の病歴、それと疫学情報と組み合わせで、陽性結果を考察してください。

● 抗原EUAの認可条件(Conditions of Authorization)は、次のように指定されていることに注意してください。承認された検査室(Authorized Laboratories)は、抗原検査の実施に関する情報を収集し、偽陽性かまたは偽陰性の結果のどんな疑わしい発生でも、それと確立された性能特性からの大幅な逸脱を報告してください、それらはFDAと:検査機器製造会社の両方が認識します。

 

バックグラウンド

FDAは、2020年5月に、COVID-19抗原検査に対して最初の緊急使用許可(Emergency Use Authorization、EUA)を発行しました。 これらの診断検査は、綿棒(swabs)を使用して鼻腔(nasal cavity)から収集した検体を検査することにより、ウイルス上かまたはウイルス内で見つかったタンパク質の断片を迅速に検出します。 FDAが承認した抗原検査のリストは、FDAの「試験管内診断の緊急使用許可ページ(In Vitro Diagnostics EUA page)」で利用可能です。

抗原検査は、COVID-19に対する全体的な反応で重要なツールですし、そして公衆衛生(public health)の利益です。 抗原検査の主な利点の1つは、数分で結果を提供できる検査の速さです。 これらのタイプのテストの有効性は、何百万人ものアメリカ人を迅速に検査する能力を提供するかもしれません。

一般に、抗原検査は分子検査(molecular tests)ほど高い感度(sensitive)ではありません。

分子分析評価と比較して感度が低下する潜在性があるため、抗原検査からの陰性結果は、治療法を決定する前に分子検査で確認する必要があるかもしれません。 抗原検査からの陰性結果は、臨床観察、患者の病歴、それと疫学的(epidemiological)情報の文脈で考察されるべきです。

分子検査のように、抗原検査は、通常、SARS-CoV-2ウイルスに対してとても高い特異度です。 しかしながら、総ての診断テストは、特に有病率が低い状況では、偽陽性服従するかもしれません。 医療提供者は、利用可能な総て臨床、診断そして疫学情報の文脈で、常に診断検査の結果を慎重に考察するべきです。 ヒト抗体(例えば、リウマチ(Rheumatoid)因子、または他の非特異的抗体)の存在など、患者固有の要因からの検査干渉(Test interference)や、高粘度(viscous)の検体はまた、偽陽性の結果につながりえます。

 

FDAの行動

FDAは、高齢者居住施設やその他の状況でのCOVID検査の使用を保護するために、米国疾病予防管理センター(CDC)や公的高齢者/障害者医療保険と低額所得者のための国民医療保障制度サービス・センター(Centers for Medicare and Medicaid Services、CMS)などの他の機関と引き続き協力しています。

FDAはまた、偽陽性の結果の発生を最小限に抑えるために、彼らの使用説明書が可能な限り明確であることを確認するために、検査機器製造会社と協力しています。

FDAは、臨床検査スタッフ、医療提供者、製造業者、そして一般市民が、新規または追加情報が知らされることを維持し続けます。

 

 

----- 出典 -----

www.fda.gov

 

----- 2020/11/03公開の文章を読んで -----

WHOが、PCR検査の偽陽性について言及したのと同じことを、FDAは、もう少し一般向けに具体例を示しています。WHOやFDAのような公的機関が、自らのホームページに公式に掲載していることに意味があります。本編の青字の部分を表にすると、有病率が低い(つまり、病人が少ない集団や地域)と、とんでもない結果になることを示しています。

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高性能なPCR検査などを症状がない人(集団)に実施することが、多くの偽陽性を含んだ検査陽性結果を生み出し、隔離施設/医療施設を逼迫することになりかねません。そうして、パンデミックがいつまでも収束しないことにもつながります。

検査機器製造会社の提供する、評価用の特定試薬に対する評価試験で高性能なことが示されていてさえも、実際に検査で使用した時に、示されている機器の性能と乖離した結果になることが、ベイズの定理のままに起こります。

 

PPV(Positive Predictive Value): 陽性適中率 - Wikipedia

NPV(Negative Predictive Value): 陰性適中率 - Wikipedia

ベイズの定理 - Wikipedia

 

----- パズルのピース -----

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