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物理学者達は、3スリット実験で光のエキゾチックなループ軌道を検出


物理学者達は、3スリット実験で光のエキゾチックなループ軌道を検出

(図 Light Pixabay by Barbara Jackson)

(Fig.) アーティクル・イメージ  赤い経路は、新しい研究で初めて観測された、3スリット構造を通る光のエキゾチックなループ軌跡を示しています

 

(Phys.org) - 物理学者達は、初めて光子の「エキゾチックなループ軌道」が含む、200年前の有名な2重スリット実験(double-slit experiment)のバリエーションを実行しました。これらの光子は1つのスリットを通って前方に移動し、次にループして別のスリットを通って戻り、そして、時々再びループして、3番目のスリットを通って前方に移動します。

興味深いことに、全体の干渉パターンに対するこれらのループ軌道の寄与は、重ね合わせの原理(superposition principle)(a)の通常の形式からの明らかな逸脱につながります。この見かけ上のずれは、重ね合わせ原理の誤った適用として理解することができます - ループ軌道と直線軌道間の追加の干渉が考慮されると、重ね合わせを正しく適用できます。

オマール・S・マガニャ=ロイザ(Omar S.Magaña-Loaiza)氏とイスラエル・デ・レオン(Israel De Leon)氏が率いる物理学者達のチームは、ネイチャー・コミュニケーション(Nature Communications)誌の最近の号で新しい実験に関する論文を発表しました。

 

光のループ

「私達の研究は、ループ軌道の最初の実験的観測です」と、デ・レオン氏は Phys.org誌に伝えました。「ループ軌道は、発生の可能性が低いため、検出が非常に困難です。以前に、研究者はこう提案していました、これらのエキゾチックな軌道は存在する可能性がありますが、しかし、それらを観察することはできませんでした。」

ループ軌道の発生の確率を高めるために、研究者達は表面プラズモン(plasmons)をサポートする3スリット構造を設計しました。科学者はこれを「金属の表面に存在できる、強く閉じ込められた電磁場」と表現しています。3つのスリットの近くのこれらの電磁場の存在は、全体の干渉パターンに対するループ軌道の寄与を、ほぼ2桁増加させます。

「私達は、物理的な説明をこう提供しました、スリット周辺の近接場に、これらのエキゾチックな軌道の確率を関連付けます」と、デ・レオン氏は述べました。「そのため、ループ軌道に続く光子の確率を高めるために、スリット周辺の近接場の強度を高めることができます」。

 

ループ軌道の説明ための重ね合わせ原理

ループ軌道による新しい3スリット実験は、1801年にトーマス・ヤング(Thomas Young)氏により最初に行われた、オリジナルの2重スリット実験の多くのバリエーションの1つにすぎません。それ以来、研究者達は、光子の代わりに電子、原子、または分子を使用するバージョンを実行しています。

2重スリット実験(b)が大変に注目を集めた理由の1つは、量子重ね合わせの原理(principle of quantum superposition)(c)の物理的表現を表していることです。個々の粒子が干渉パターンを作成できる観察はこれを意味します、粒子は両方のスリットを同時に通過する必要があります。同時に2つの場所または状態を占有するこの能力は、量子重ね合わせの定義の特徴です。

 

(Fig.1) 3スリットでの光路  光の直線軌道(緑)とエキゾチックなループ軌道(赤、破線、点線)。ここで、表面近くの赤い雲が近接場を表し、光子がループ軌道をたどる確率を高めます。左のグラフは、独立して処理されている1つのスリットのみを照らす(灰色の線)と、実際の結合システム(青い線)により作成された干渉パターンの大きな違いの、シミュレーション(上)と実験結果(下)を示しています。灰色の線と青色の線の驚くべき違いは、ループ軌道によって引き起こされます。クレジット:マガニャ=ロイザ(Magaña-Loaiza)氏ら。ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)

 

これまでのところ、実験の総ての以前のバージョンは、この結果を生み出しました、重ね合わせの原理によって正確に記述されているようです。 この理由は、通常の条件下ではループ軌道がたいへんに稀で、全体的な干渉パターンへの寄与は通常無視できます。従って、これらのケースに重ね合わせ原理を適用すると、とても優れた近似が得られます。

ループ軌道の寄与が無視できなくなるとき、干渉の合計は、光子の個々の波動関数(wavefunctions)と直線軌道の単純な重ね合わせではないことが明らかになります。そのため、干渉パターン(d)は通常の形式の重ね合わせ原理では正しく記述されません。

マガニャ=ロイザ氏は、この明らかな逸脱をより詳細に説明しました:

「重ね合わせの原則は常に有効です。有効でないのは、2つまたは3つのスリットを持つシステムへの重ね合わせの原則を不正確な適用です」と、彼は述べました。

「過去2世紀にわたって、科学者達はこう想定しました、2スリットかまたは3スリット干渉計(interferometer)で1つのスリットのみが照明される場合、干渉を観察することはできません。この理由は、このシナリオが通常または典型的なケースを表しているからです。

「しかしながら、私達の論文では、光子がループ軌道をたどる確率が無視できる場合のみ、これが真実であることを実証します。驚くべきことに、干渉縞は、3つのスリットのうち1つだけが照らされている場合でさえ、ループ軌道に続く光子が直線(直接)軌道に続く光子と干渉するときに形成されます。

「重ね合わせの原理は、2つの波動関数の和かまたは「重ね合わせ」を用いて、この驚くべきシナリオに適用できます;1つは直線軌道を描写し、もう1つはループ軌道を描写します。ループ軌道を考慮しないことは、重ね合わせ原理の誤った適用を表します。

「いくぶん、この効果は奇妙です。何故ならば科学者達は、トーマス・ヤング氏が片方だけでなく両方のスリットを照らしたときに、干渉を観測したことを知っているからです。これは、ループ軌道に続く光子の確率が無視できる場合のみ真実です。」

これらの実験に適用されるように、重ね合わせ原理に関する物理学者の理解に影響を与えることに加えて、この結果はまた、量子シミュレータ(quantum simulators)や干渉効果に依存するその他のテクノロジーに応用できる、光の新しい特性を明らかにします。

「私達はこう考えています、エキゾチックなループパスは、干渉計のデコヒーレンス(decoherence)メカニズムの研究や、または、量子ランダムウォーク(quantum random walks)、量子シミュレータ、および量子計算で使用される他のアルゴリズムの特定のプロトコルの複雑さを増加させるため、重要な意味を持つかもしれません。」と、デ・レオン氏は述べました。

 

 

----- 出典 -----

phys.orgwww.nature.comowlcation.com

 

----- 2017/01/06公開の記事を読んで -----

一般常識では「光は直進する」のですが、「プリズムで七色に分光する」ことも知られています。七色とは... 光にはさまざまな色となる波長が含まれており、光はいわいる波です。なので、障害物の後ろにも回り込む「回折」が起こります。

基本的な性質はこのようなものなのですが、この実験は光の並外れた性質を明らかにしています!

光は、粒子だとしても波紋としても、直進する... しかし、ごく一部だが条件しだいで逆進するとのこと。

量子だと思えば、観測されるまで至る所に存在するのでしょうが... 自然はミステリーだらけです。

 

----- パズルのピース -----

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