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人工磁場中の巨大光子 - 媒質のなかでの振る舞い


人工磁場中の巨大光子 - 媒質のなかでの振る舞い

(図 Physics Pixabay by Gerd Altmann)  (Fig.) アーティクル・イメージ

複屈折(birefringent)光学キャビティ[空洞]から反射された偏光(polarized)の角度(横軸)に対するエネルギー(縦軸)の依存性。

 

ポーランド(Poland)、英国(UK)、ロシア(Russia)の国際的な研究協力は、2次元システム - 液晶(liquid crystal)で満たされた薄い光学キャビティ[空洞] - を作成し、その中に光子を閉じ込めました。キャビティの特性が外部電圧によって変更されたとき、人工磁場の影響下で、光子は、「スピン(spin)」と呼ばれる磁気モーメントを与えられた巨大な準粒子(quasiparticles)のように振る舞いました。この研究は、2019年11月8日金曜日にサイエンス(Science)誌に掲載されました。

私達の周りの世界には、1つの時間的な(temporal)次元と3つの空間的な(spatial)次元があります。凝縮物質(condensed matter)を研究している物理学者達は長い間、2次元(2-D)量子井戸(quantum wells)、1次元(1-D)量子ワイヤー(quantum wires)、およびゼロ次元(0-D)量子ドット(quantum dots)といった低次元のシステムを扱ってきました。2次元システムは、最も幅広い技術的応用を発見しています - 効率的なLEDとレーザーダイオード(laser diodes)、集積回路の高速トランジスター、WiFi無線増幅器が動作するのは、寸法が縮小されたおかげです。2次元に閉じ込められた電子は、自由電子とはまったく異なる動作ができます。たとえば、グラフェン(graphene) [1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート状物質] では、ハニカム対称(honeycomb symmetry)の2次元炭素構造では、電子は質量のない物体、すなわち光子と呼ばれる軽い粒子のように振る舞います。

結晶内の電子は相互に、また結晶格子(crystal lattice)と相互作用し、いわゆる準粒子の概念の導入のおかげで説明が可能な複雑なシステムを作成します。電荷、磁気モーメント(magnetic moment)、そして質量を含むこれらの準粒子の特性は、結晶の対称性とその空間次元に依存します。物理学者達は、エキゾチック(exotic)な準粒子に満ちた「準宇宙」を発見する縮小された次元で、材料を作成できます。2次元グラフェンの質量のない電子はそんな例です。

 

(Fig.1) 液晶で満たされた光学キャビティから反射された円偏光のトモグラフィー(Tomography)。

 

これらの発見は、ワルシャワ大学(University of Warsaw)、ポーランド軍事工科大学(Polish Military University of Technology)、ポーランド科学アカデミー物理学研究所(Institute of Physics of the Polish Academy of Sciences)、サウサンプトン大学(University of Southampton)、モスクワ近郊のスコルコボ研究所(Skolkovo Institute)の研究者をインスパイアし、二次元構造 - 光学キャビティ - に閉じ込められた光を研究しました。

サイエンス誌の論文の著者は、2つの鏡の間に光子を閉じ込める光学キャビティを作成しました。オリジナルのアイデアは、光学媒体として機能する液晶材料でキャビティを埋めることでした。外部電圧の影響下で、この媒体の分子は回転でき、また光路長を変更できます。このため、キャビティ内に光の定在波(standing waves)を作成することが可能でした。そのエネルギー(振動の周波数)は波の電場(偏光)が分子全体に向けられたときに異なっており、その軸に沿った偏光は異なっていました(この現象は光学異方性(optical anisotropy)と呼ばれます)。

ワルシャワ大学で実施された研究中、キャビティに閉じ込められた光子のユニークな挙動が発見されました。それは質量を持つ準粒子のように振る舞ったからです。そのような準粒子は以前に観察されましたが、しかし、しかし、光は電場や磁場に反応しないため、操作が困難でした。今回、このことが注目されました。キャビティ内の液晶材料の光学異方性が変化すると、閉じ込められた光子は、磁気モーメント、または「人工磁場」の「スピン」を与えられた準粒子のように振る舞いました。電磁波の偏向は、キャビティ内の光に対して「スピン」の役割を果たしました。このシステムでの光の振る舞いは、凝縮物質中の電子の挙動の類推を使用して説明するのが最も簡単です。

 

(Fig.2) 実験のスキーム - 伝搬方向に応じて液晶で満たされたキャビティを透過した光の円偏光(赤と青でマーク)。

 

キャビティに閉じ込められた光子の運動を記述する方程式は、スピンを伴う電子の運動方程式に似ています。それ故に、このフォトニック・システムを構築することができました。電子の特性を完全に模倣し、そして、光のトポロジカル(topological)状態などの多くの驚くべき物理的効果をもたらします。

光学的異方性キャビティ内の光の閉じ込めに関連する新しい現象の発見は、新しい光電子(optoelectronic)デバイスの実装を可能にします。例えば、光学ニューラル・ネットワーク(optical neural networks)とニューロモーフィック計算(neuromorphic calculations)を実行します。物質のユニークな量子状態、つまりボーズ・アインシュタイン凝縮体(Bose Einstein condensate)を作成する見通しには、特定の期待が持てます。このような凝縮体は、量子計算(quantum calculations)やシミュレーションに使用でき、現代のコンピューターでは難しすぎる問題を解決できます。研究された現象は、技術的解決策とさらなる科学的発見の新たな可能性を切り開きます。

 

 

----- 出典 -----

phys.org(同様な記事)

scitechdaily.comwww.spacedaily.comwww.eurekalert.org

 

----- 2019/11/12公開の記事を読んで -----

新しいデバイスの基礎になる研究のようです。量子コンピュータももっと速くなるかもしれません。

さて科学的な側面としては、身近にありながら、最も分かっていない質量がゼロの物質? 光です。この実験で示しているのは、ある条件下(媒質の中)では電子のように振る舞うことです。光と電子、どこにそんな共通性があるのか... ミステリーだらけです。

 

光子 - Wikipedia

 

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