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ダークマターの実験が説明のつかない信号を見つける


ダークマターの実験が説明のつかない信号を見つける

(図 Pattern Pixabay by Rachel Burkum)

(Fig.) アーティクル・イメージ  XENON1T検出器の心臓部、これは、架空の粒子との稀に起こる相互作用を探すために設計されました。

 

研究者達はこう言います、異常なデータには3つの考えられる説明があります。 1つ目は平凡なものです。 2つ目は物理学に革命を起こすでしょう。

 

ダークマター(dark matter)に対して、世界で最も敏感な実験的探索を実行している物理学者達は、何か奇妙なものを見てきました。 彼らは検出器内の予期しない過剰な出来事を発見しました、これはアクシオン(axion)と呼ばれる仮想のダークマター粒子のプロフィールに適合し得ます。 代わりに、データはニュートリノ(neutrinos)の新しい特性により説明もできます。

もっとありふれたことに、信号は実験内の汚染から来ることができます。

「この過剰についてエキサイトしているにもかかわらず、私達はとても辛抱強くなければなりません」と、シカゴ大学(University of Chicago)の物理学者で、XENON1T [キセノン・ワン・ティ]と呼ばれる163人の実験のリーダーの1人であるルカ・グランディ(Luca Grandi)氏は述べました。 トリチウム(tritium)原子による汚染の可能性を排除するために、実験の後継者が必要です。 その実験が、今年後半に開始されることが期待されています。

外部の専門家達はこう言います、退屈な説明があるときはいつでも、それは通常正しいです。 しかし、いつでもではありません - そして、XENON1Tが発見をした可能性に過ぎないことは、注目に値します。

 

「もしも、これが新たな粒子だと判明したのならば、それは過去40年間私たちが待ち望んでいた画期的な出来事です」と、実験に関与しなかったフランス(France)のパリ=サクレ大学(Paris-Saclay University)の素粒子物理学者(particle physicist)のアダム・ファルコフスキ(Adam Falkowski)氏は言いました。 「もしこれが本当ならば、あなたは発見の重要性を誇張できません。」

素粒子物理学者は、自然のより完全な目録を長い間探してきました。これは、素粒子物理学の標準モデル(Standard Model)として知られている粒子と力のセットを超えています。 そして20年間、XENON1Tのような実験は、ダークマターを構成する未知の粒子を特に探し求めてきました。ダークマターは、宇宙全体に重力の重さを投げる不可視なものです。

もしも、XENON1Tの信号が、アクシオンダークマターの最有力候補 - または標準外のニュートリノ(neutrinos)から来ているのならば、「それは明らかにとてもエキサイティングです」と、カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)の理論物理学者の、キャスリン・ズレク(Kathryn Zurek)氏は述べました。 しかし今のところ、「私の考えでは、トリチウムの平凡な説明の可能性が高いです」。

この論文で描写されている結果は、XENON1T検出器内の「電子反跳(recoils)」と呼ばれる出来事の積み重なりです。 3.2メートル・トンの純粋なキセノン(xenon)のセンサーの並ぶ検出器のタンクは、イタリアの山のグランサッソ(Gran Sasso)の数千フィート地下にあります。 化学的に不活性な「貴重な」元素として、キセノンは、何かが飛び抜けるはずの、未知の粒子の波紋を探すための静かな注視点プールを作ります。

 

キセノン(XENON)[計画]の一連の実験は、もともと、弱い相互作用の質量粒子(weakly interacting massive particles、またはWIMPs)と呼ばれる重い仮想のダークマター粒子を探すために設計されました。 検出器を通過するあらゆるWIMPsは、時折キセノン原子核(nucleus)と衝突するはずで、閃光を創ります。

けれども、これまでより大きく、より感度の高い検出器で14年間検索した後に、研究者達はこれらの核の反跳を見たことがありません。 他の希元素(noble elements)や物質のタンクで、核反跳を探す競合実験もそうではありません。 「それは冒険物語でした、そして私達は皆とても死に物狂いです」と、キセノン・ベースの検出方法を考案(devised)し、それ以来キセノン[計画]の実験を主導してきたコロンビア大学(Columbia University)の素粒子物理学者、エレナ・アプリーレ(Elena Aprile)氏は述べています。

 

(Fig.1) キセノン[計画]の実験リーダーのエレナ・アプリーレ氏は、コロンビア大学の彼女の研究室にいます。

 

WIMPの探索が無意味になり続けると同じくして、キセノン[計画]の科学者達は数年前に次のことに気づきました。彼らは、彼らの実験を使用して、検出器を通過するかも知れない他の種類の未知の粒子を検索することができます: キセノン原子核よりむしろ電子にぶつかる粒子です。

彼らは、これらの「電子反跳」をバックグラウンド・ノイズとして扱っていましたし、そして確かにこれらの出来事の多くは、放射性鉛(lead)やクリプトン(krypton)同位体(isotopes)などの平凡な発生源により引き起こされます。 けれども、何年にもわたってそれらのバックグラウンド汚染を劇的に減らすために改善を行った後、研究者達はこれを発見しました、それらは低レベルのノイズで信号を探せます。

彼らの新しい分析で、物理学者達は、最初の1年分のXENON1Tデータでの電子反跳を調べました。 彼らは、バックグラウンド汚染の既知の原因によって引き起こされた、これらの反跳のうちおよそ232を見ること期待しました。 しかし、実験では285が見られました - これは、説明されていない情報源を意味する53の過剰です。

 

チームは、調査結果を約1年間未公開にしました。 「私達は働いて、働いて、理解しようと努めてきました」と、アプリーレ氏は言いました。 「つまり、これらの貧しい学生たち!」 彼らが考える可能性のある総てのエラーの原因を却下した後、研究者達は、これは、「それらの」データ・プロットのバンプ(bump)[衝突]のサイズと形状に適合するだろう3つの説明を思いつきました。

最初に、そしておそらく最もエキサイティングなのは、太陽の内部で生成される仮想の粒子で、光子に似ていますが、質量がごくわずかな「太陽アクシオン(solar axion)」です。

最近太陽で生成されたあらゆるアクシオンは、原始時代から宇宙を形作ったダークマターではあり得ませんでした。 しかし、もしも実験で太陽のアクシオンが検出されたのならば、それはアクシオンが存在することを意味します。 「そのようなアクシオンはまた、初期の宇宙でも生成され得ますし、そして、ダークマターの一部を構成するでしょう」と、スタンフォード大学(Stanford University)の素粒子物理学者で、アクシオンとそれらを検出する方法について理論を立てたピーター・グラハム(Peter Graham)氏は述べました。

研究者達はこう述べました、XENON1Tのバンプから推測される太陽アクシオンのエネルギーは、アクシオンダークマターの最も単純なモデルには適合しませんが、しかし、より複雑なモデルは、おそらくそれらを調整できます。

もう1つの可能性はこうです、ニュートリノ(neutrinos) - 既知の自然の粒子の中で最も神秘的 - には大きな磁気モーメント(magnetic moments)があるかもしれません、つまりそれらは小さな棒磁石(bar magnets)のようなものです。 そのような特性は、それらが高い割合で電子と散乱することを許可し、電子反跳の過剰を説明します。 グラハム氏はこう述べました、磁気モーメントを持つニュートリノは「とてもエキサイティングです、標準モデルを超える新しい物理を示しているからです。」

 

しかし、次のことも可能です。キセノン・タンクには、希少な水素同位体トリチウムが微量に存在しますし、そうして、それらの放射性崩壊(radioactive decays)は電子反跳を生成します。 この可能性は「確認も除外もできない」と、XENON1Tチームは彼らの論文に書きました。

外部の研究者達はこう言います、ファルコウスキー氏が言ったように、「赤ではなくオレンジの旗」があり、それは退屈な答えを示しています。 最も重要なことは、もし太陽がアクシオンを生成するのなら、総ての恒星がアクシオンを生成することです。 これらのアクシオンは、沸騰しているやかん(kettle)のエネルギーを運ぶ蒸気のように、恒星から少量のエネルギーを引き離します。 赤色巨星(red giants)や白色矮星(white dwarves)のようなとても熱い恒星では、アクシオンの生成が最大になるはずで、このエネルギー損失は恒星を冷やすのに十分です。 「白色矮星はかなり多くのアクシオンを生成します。私達は、今日の私達のように、白色矮星を理解しません」と、ズレク氏は述べています。

 

大きな磁気モーメントを持つニュートリノも同様に嫌われています: 標準的なニュートリノと比較して、それらの多くは恒星の内部で自発的に生成され、観測されている以上に、より多くの恒星のエネルギーを衰弱させ、熱い恒星を冷却します。

しかし、その論理には欠陥があるかも知れませんし、または、他の粒子や効果がXENON1Tのバンプを説明しているかも知れません。 幸いなことに、物理学コミュニティは答えを待つ必要はありません; XENON1Tの後継のXENONnT実験 - 8.3メートル・トンのキセノンの反跳を監視します - は、今年後半にデータ収集を開始するために順調に進んでいます。 「もしも過剰分があり、同じレベルならば」、グランディ氏は、「私達は、数か月のデータ取得で[可能性]の中で識別できると期待しています。」と述べました。

 

「1つのことは明らかです」と、シカゴ大学(University of Chicago)のダークマター物理学者で、実験に関係のないフアン・カラー(Juan Collar)氏は述べました。 「キセノン計画は、ダークマターの分野で開拓者を続けています。 最も敏感な実験は、予期しないことに最初に偶然会いますし、そしてキセノン[計画]は、その貴重なポール・ポジション[有利な立場]で堅実につかむことを維持し続けています。」

 

 

----- 出典 -----

www.quantamagazine.orgnews.uchicago.eduwww.bbc.com

 

----- 2020/06/17公開の記事を読んで -----

質量を持ち重力に関与するが、不可視な粒子としてダークマターが想定されています。本文で紹介されているのは、不活性ガスのキセノンに「何かが衝突するのを検出する実験」で、その意味ではダークマターには相互作用があるとしています。

  • この実験は、カミオカンデニュートリノ検出に似ています。あまりに微弱なものの測定ですから、ノイズへの果敢な挑戦になるのでしようか。

ダークマター同様に、理論的に予想される重力子(グラビトン)も未発見です。重力についてはミステリーのままです。

 

Dark matter - Wikipedia ( 暗黒物質 - Wikipedia )

カミオカンデ - Wikipediaスーパーカミオカンデ - Wikipedia

Graviton - Wikipedia ( 重力子 - Wikipedia )

 

----- パズルのピース -----

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